「東京ゲームショウ2022」ではゲーム業界をテーマにしたビジネスセミナー「TGSフォーラム」を開催。その中で、日本のeスポーツ市場の継続的かつ健全な成長をテーマにするパネルディスカッション「Future of esports」が行われた。eスポーツを支える行政、メディア、プロゲーマー、スポンサー企業の代表者が集まり、eスポーツの未来について意見を交わした。
行政からは、経済産業省でゲーム産業を担当する商務情報政策局 コンテンツ産業課 課長補佐の上田泰成氏、メディアからは4Gamer.net編集長の岡田和久氏、プロゲーマーの代表として『ストリートファイターV』でプロ選手として活動するネモ選手、スポンサー企業からは、マウスコンピューター マーケティング本部 部長の杉澤竜也氏が登壇した。
最初に、日本のeスポーツ産業の概要や市場動向を紹介した。日本のeスポーツ市場は2020年が66.8億円で、24年に180億円に成長する見込み。ゲーム産業全体から考えるとかなり小さい金額だが、その成長率は大きく、市場として成長が期待できるものだ。
eスポーツを視聴するファン層は若い世代が中心だったが、最近は30代以上にも浸透。幅広い層でに認知され始めている。
とはいえ、視聴者はZ世代が中心であり、Z世代へのアプローチやエンゲージの高さは、他の商材にはない利点だ。
これまでのマーケティングアプローチは企業側からの一方通行であったが、Z世代を中心とする若い世代ではコミュニティーなどを通じた対話型に移ってきている。商品自体の魅力や企業による訴求よりも、それをレコメンドするインフルエンサーの影響力のほうが強いのが実態だ。eスポーツもそれに近く、例えばゲーミングPCを購入する際も、PC自体がほしいのではなく、eスポーツで見たゲームをプレーするため、eスポーツ選手が使用しているPCと同じものがほしいといったことが動機になる。
他分野の事例を見てみると、サッカーの川崎フロンターレでは、観客の高年齢化に危機感を抱き、サッカーゲームを通じて若い世代にアプローチした。スタジアム近くでゲームイベントを開催することで、スタジアムへ誘導。結果、多くの人がスタジアムに訪れ、初めてスタジアムに来たという来場者が全体の96%となった。
スポンサーが連携し、相乗効果アップ
eスポーツ業界のエコシステムの一端を担っているのがスポンサーだ。これまではスポンサーの数も少なく業態も限られていたが、昨今はeスポーツの認知度が高まり、さまざまな業態の企業がスポンサーとして参入している。スポンサーが増えたことで、スポンサー同士が連携し、相乗効果が見込まれる事例もあるという。
認知度が低い、比較的新しいチームでもスポンサーと効果的に提携している場面も多い。スポンサーとともに、その商品や企業イメージを上げることを一緒に考えられるチームであれば、チーム規模の大小にかかわらず支援されることはある。
選手側の意見として、ネモ選手はスポンサーに対して長期的な支援活動をしてほしいと要望する。「早々に撤退してしまうと、プロ選手になった若い人たちはその後、どうなってしまうのかという思いがある。ファンの獲得は簡単ではなく、時間がかかるものなので、長期的視野で見てほしい」とネモ選手。
認知度も市場も拡大しているeスポーツではあるが、まだまだ課題もある。プロ選手となっても生活していける選手は限られていて、プロ選手としての寿命も短い。プロ活動をしている間にもさまざまな技術を付ける必要がある。
教育現場ではeスポーツの部活動化も進んでいるが、インフラ整備や保護者への理解が足りず、教える側の人材も不足している。部活動に対しては、行政の支援もまだないため、経済産業省としては文部科学省と連携していくことを考えているという。
パネルディスカッションでは、eスポーツが知名度をより上げるために、スター選手の創出が課題と言われているが、それ以上にeスポーツ自体が世間に認められた風潮、空気感を作る必要があるとも指摘。選手の活動やeスポーツ自体の権威付けが必要との考えも示された。
その権威付けの1つとして、日本eスポーツ連合(JeSU)が「eスポーツアワード(仮)」を創設する計画であることも発表した。詳細までは発表されなかったが、登壇者からは、スポンサーのついていないチームや大会運営の裏方、地方で活動している人などにもスポットを当てられる賞にしてほしいとの要望が。上田氏は経済産業大臣賞を設けることができるようにしたいと述べた。eスポーツに関わる人たちが日の目を見るようなものとなることに期待したい。
(文/岡安学、写真/志田彩香)
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“システムエンジニアとして会社に勤めながら、格闘ゲーム界の頂点で世界を舞台に戦ってきたプロゲーマー・ネモ。ゲーム仲間が次々と"専業"プロゲーマーになる一方、彼はあえて"兼業"の道を選びました。
“兼業プロゲーマー"としても知られた彼の道のりは、プロゲーマーとして輝かしい戦績を積み重ねると同時に、自分なりの働き方を模索し続けた日々でもあります。ゲームやeスポーツファンはもちろんのこと、「やりたい仕事」「向いている仕事」とは何か、好きなことを仕事に生かすにはどうすればいいかに悩む、ビジネスパーソンの皆さんにもお読いただきたい1冊です。
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