背番号「17」が今年を振り返る時、自身3勝目を挙げ、51年ぶりの優勝マジック9を点灯させた10月14日のバファローズ戦(京セラドーム)が一番最初に思い出される。色々な出来事があった一日だった。
まずは朝。起きようと思ったら、身体が動かなかった。佐々木朗希投手は朝10時頃に目を覚ました。ただ、身体は動かなかった。初めての経験だった。
「起きようと思ったけど、身体が思うように動かなかった。自分で必死に身体を動かして、やっと思い通り動いた。初めての経験でした。あれが金縛りという現象ですかねえ」
佐々木朗希はその時の事を振り返った。首位のバファローズと1・5ゲーム差で迎える大事なゲームだった。しかも相手先発は同じ年の宮城大弥投手。なによりもマリーンズが勝てば51年ぶりの優勝マジック9が点灯するという大事な試合。その時、19歳だった若者に緊張するなと言っても、簡単な作業ではない。否が応でも意識をした。きっと眠りにはついても脳は緊張をしたままだったのであろう。起床の際に身体と脳はそんな状況でいつもと違う反応をし、金縛りのような現象は起きたと推測される。
「夜は普通に眠ることができたのですけどね。でも、やはり勝った方がリーグ優勝に向けて有利になる試合で相手は宮城。意地でも負けられないという気持ちはありました。自分が思っていたよりも緊張をしていたのだと思います。まさかの現象が起きました」と佐々木朗は思い出して笑った。
プロ入り後、初めて中6日での先発マウンドに上がった。マリーンズは初回の攻撃で宮城から3点を奪う絶好のスタート。しかし佐々木朗は目を覚ました時と同じようにマウンドでも異変を感じた。
「マウンドでも身体が動かないというか、自分の思い通りに投げられない感覚になりました。ブルペンではまったくそんなことはなかったのですけど、マウンドに上がると、緊張でなんかいつもと違う感覚。悪い立ち上がりになってしまいました」(佐々木朗)
先頭の福田をいい当たりも右飛に打ち取る。続く宗の打球は左中間を割るかと思われたが中堅の岡大海外野手が頭からスライディングしてキャッチ。その後、連打を浴びて一、二塁とされるが、5番モヤを二ゴロ。バタバタした立ち上がりとなったが、なんとか無失点に切り抜けてベンチに戻った。そこで佐々木朗は猛反省をする。
「本当に守りに助けられた立ち上がり。ベンチにもどって、しっかりと修正をしないといけないと思いました。なんでダメだったのか、考えました。そして1イニングと短い時間しかなかったのですけど、なんとか修正をしました」
佐々木朗の凄さは平均で150キロを超える剛速球にキレ味鋭いスライダーにフォーク。そしてもう一つ、特筆すべきは修正能力の高さがある。この時、背番号「17」は今までにない緊張感でマウンドに上がり、自分らしくない立ち上がりを露呈してしまった。しかし、一度、ベンチに戻ると冷静に自己分析を行い、短時間で見事に修正をしてみせた。二回以降は連打を浴びることもなく無失点。結果的に6回を投げて被安打5、無失点で勝ち投手となり、マリーンズは51年ぶりとなる優勝マジックを点灯させた。
「修正をした内容は企業秘密です。ただ、自分の中では大きな発見のある修正となりました。それ以降の登板ではそれが分かっていたから立ち上がりから落ち着いて投げることが出来た。クライマックスシリーズファーストステージの時も大丈夫でした。不安な立ち上がりの入りはなくなった。試合の中で修正が出来た。それは本当に自分の中で自信になるし、手ごたえを感じた。あの試合はそんな試合でした」
佐々木朗自身がそのように振り返るようにその後の先発登板では、さらに安定感は増していった。11月6日、本拠地ZOZOマリンスタジアムで行われたイーグルスとのクライマックスシリーズファーストステージでは開幕投手を任され、6回を1失点。勝ち投手にこそならなかったがMAX159キロを計測し、チームの勝利に貢献をした。極度の緊張が引き起こした金縛りから始まった大阪でのあの試合が、将来、佐々木朗希という令和の怪物投手を振り返る時、大事なキーポイントと言われることになるかもしれない。それほど自信を掴んだ一日となった。
クライマックスシリーズファイナルステージは優勝マジックを点灯させた大阪の地でバファローズに敗れマリーンズの日本シリーズ進出の夢は潰えた。3戦で終わったため4戦目で先発予定だった背番号「17」の先発は残念ながら実現することはなかった。佐々木朗は試合後、メディアに向けて次のようなコメントを残した。
「今年は試合でしっかりと投げることが出来て、まずはよかったかなと思っています。クライマックスシリーズファーストステージや51年ぶりに優勝マジックが点灯する試合など大事な試合で投げることが出来たのが思い出深いですし、投げる経験が出来てすごく良かったと思っています。今年、自分の中で掲げていた目標はプロ初勝利、そして10試合以上の一軍登板でした。その目標をクリアできたことも良かったと思います。今後もしっかりと自分なりの段階を踏んで成長していけたらと考えています。来年は開幕から一年間を通してチームのに貢献できるよう頑張りたいと思います。そのためにもこのオフの期間が大事になると思いますので、しっかりと準備をしていきたいです」
気持ちはすでに2022年を向いている。1年目は徹底的に体力作りに充て、あえて実戦のマウンドに上がることはなかった。迎えた2年目は11試合に登板をして3勝2敗。防御率は2.27でストレートの球速は159キロを計測した。夢の160キロ台はもうすぐそこまで迫っている。誰もが、その規格外のピッチングに無限の未来を感じる。しかし、まだベールを脱いでいない。本当の姿は3年目の2022年に見せてくれるはずだ。
千葉ロッテマリーンズ広報室 梶原 紀章
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