いろいろなパーツを組み合わせて自分好みの1台を作る「自作キーボード」について紹介する本連載。前回はキーボードの要「キースイッチ」についてその仕組みから改造に至るまでかなりディープに紹介した。
今回はキーボードの顔ともいえる「キーキャップ」について、その見た目だけにとどまらない魅力を紹介していく。
びあっこ(@Biacco42)
自作キーボード「Ergo42」作者。自作キーボードのDiscordコミュニティ「Self-Made Keyboards in Japan」管理人。
連載:「ハロー、自作キーボードワールド」
自作キーボードの作者であり、キーボード関連のニュース動画「ほぼ週刊キーボードニュース」を配信するぺかそとびあっこが、自作キーボードの世界の“入り口”を紹介していく。
キーボードの“顔”、キーキャップとは
キーキャップはキースイッチの「軸」部分にかぶせるパーツだ。表面(キートップ)にはそのキーに押したときに入力される文字や記号が刻印されている。キースイッチとキーキャップの一組がそろって初めて1つのキーとして成立する、キーボードの中でも重要なパーツだ。
キーキャップは指先が直接触れるため、その形状や材質、表面の仕上げなどが打鍵感に影響することはもちろん、キーボードの外見のかなりの部分も占める。色や刻印などのデザインに凝ったものも多く、まさにキーボードの“顔”といっていい。
キーキャップって交換できるの?
しかし、一般的にはキーボードはキーキャップを含め、全体的に黒やグレーなど無難なカラーリングのものが多い。キーキャップを自由に変えられないものもある。
一方で、前回のキースイッチ回で紹介した「Cherry MX互換スイッチ」は軸の形状が共通化されており、キーキャップに関しても互換性がある。そのため、バラエティ豊かな交換キーキャップがさまざまなメーカーから提供されている。SNSなどでカラフルな自作キーボードの写真を見たことがある人もいるかもしれない。打鍵感などの性能だけでなく、こういった見た目のカスタマイズ性が高いこともCherry MX互換スイッチとそれを用いたキーボードの魅力だ。
違うのは色だけじゃない さまざまな形状や印刷方式をチェック
ここからは具体的なCherry MX軸用の交換キーキャップを紹介しながら、キーキャップを特徴づけるいくつかの性質について紹介していこう。
代表的な形状、摩耗しても刻印が消えない「JTK Aqua」
市販のメカニカルキーボードでよく採用される形状でありながら、爽やかなカラーリングが特徴のキーキャップが中国JTKeycapsの「JTK Aqua」だ。
交換キーキャップはカラフルなデザインがまず目を引くが、形状にもさまざまなバリエーションがある。その中でもよく用いられる代表的な形状の類型のことを「プロファイル」という。JTK Aquaの“いかにも”な形状は「Cherryプロファイル」と呼ばれている。キースイッチでも紹介した独Cherryの名を冠したプロファイルだ。
Cherryプロファイルの特徴は、行ごとに角度と段差がついた「ステップスカルプチャ」(段差のある彫りの意味)と、指が当たるキートップ部分が円柱状に削られている「シリンドリカル」の組み合わせだ。高さは比較的抑えめで、キーボード全体の厚みを抑えられる。
また、目には見えないがキーキャップの素材も重要なポイントだ。キーキャップで使われる素材は大きく分けてABS樹脂とPBT樹脂の2種類があり、JTK AquaはABS。ABSは加工がしやすく、刻印部分に別の色の樹脂を流し込む「二色成形」という複雑な技術が利用できる。JTK Aquaも二色成形による刻印が行われている。二色成形は原理的には摩擦によって刻印が削れて消えてしまうことがないため、高級なABS製キーキャップでよく用いられている。
球面キートップ+材質に浸透する印刷方式の「MDA BigBang」
全体的に丸みを帯びた「MDAプロファイル」とアクセントカラーが特徴的なキーキャップがキーボード製品創作集団MelGeekの「MDA BigBang」だ。
MDAの特徴は、Cherryプロファイルと同様のステップスカルプチャと、キートップ部分が“球状”に削られている「スフィリカル」の組み合わせだ。プロファイルによってこのスフィリカルの面の形状もさまざまだが、MDAのスフィリカルは面が広く湾曲が穏やかで、サラサラとした滑らかな表面仕上げと相まって優しい手触りになっている。
MDA BigBangの素材はPBT。PBTは耐久性・耐摩耗性が高く、キートップがテカテカになりづらいというメリットがある。一方で成形が難しく、二色成形が用いられることはまれで、刻印は「昇華印刷」という手法であることが多い。しかし昇華印刷もインクをプラスチックに染み込ませるため、通常の使用で刻印がかすれてしまうことはまずないと思っていいだろう。
無刻印という選択肢 形状が全て同じの「SP DSA 無刻印」
ここまで紹介したキーキャップはいずれも刻印があり、行ごとに形状が異なるというものだった。これらの形状やデザインは通常の使用では問題がないが、自作キーボードのようなレイアウトが変則的なキーボードではその配置に困ったり、「余りのキーキャップ」が大量に生まれてしまったりということがしばしば起こる。
そういった場合に便利なのが、ステップスカルプチャのように行ごとの形状の変化がなく、どこに配置しても問題ない均一なプロファイルのキーキャップだ。
そんな特徴を備えたキーキャップの一つが、「DSAプロファイル」を採用した米Signature Plastics製の「SP DSA PBT 無刻印」だ。
DSAは前述の通り、行ごとにキーキャップの形状が変わらないフラットなプロファイル。キートップはスフィリカル(球面状)だ。上で紹介したMDAに比べるとスフィリカルの面が狭く、指がピタッと収まる印象だ。
特に無刻印の場合はキーの区別がないため、自由な個数で入手しやすい。1〜10個程度の少量から購入できる上、色の組み合わせで遊べるといった自由度の高さも魅力の一つといえるだろう。
職人技から3Dプリントまで──見た目にも楽しい「自作キーキャップ」の世界
ここまで市販品のキーキャップを紹介してきたが、自作キーボードがあるように「自作キーキャップ」という文化もある。レジンによるアクセサリーのようなキーキャップから、3Dプリント技術によるオリジナルプロファイルのキーキャップまで、その種類はさまざまだ。
職人の技、アルチザンキーキャップ
それらの中でも特にキーキャップを“キャンバス”と見立て、創作性を重視して製作される自作キーキャップは「アルチザンキーキャップ」と呼ばれる。通常のキーキャップの形状をした透明なレジンにアクセサリーやミニチュアを沈めたものや、もはやキーとしての機能を度外視した造形系のものなど、多様なアルチザンキーキャップが作られている。
こういったアルチザンキーキャップはほとんどが手作りであり、販売されるとしてもごく少量で入手が難しい。しかし、最近では通販などで販売される機会も増えている。また、製作手法についても情報の公開が進んでおり、レジンクラフトの一種として自分で作って楽しむ環境も整ってきている。
3Dプリントキーキャップ
3Dプリント技術の発展と低価格な印刷サービスの登場により、3Dプリントでのキーキャップの製造も現実的になってきている。
従来のプラスチックによる射出成形ではオリジナルのプロファイルのキーキャップや、行だけでなく列も含めて全ての位置で形状が異なるようなキーキャップはコスト的に設計や製造が困難だった。
しかし、近年の3Dプリントであれば1セット分のキーキャップを1万円程度で出力でき、実用的な強度と精度が得られる。最近では「3Dプリントアルチザンキーキャップ」と呼べるようなデザインのキーキャップも登場しており、DMM.makeのクリエイターズマーケットでは多数の3Dプリントキーキャップのモデルが公開されている。
今回はキーボードの顔ともいえるキーキャップについて紹介してきた。キーキャップはCherry MX互換キースイッチを採用したキーボードであれば、自作キーボードでなくても楽しめる。目にも手触りにも楽しい奥深いキーキャップの世界に、ぜひ足を踏み入れてみてほしい。
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