今では当たり前に付いていて、ないと非常に困る、クルマにとって欠かせない装備が「スマートキー」。
普段、何気なく使っているが、もしもスマートキーが壊れたり、電池が切れてドアが開閉できなくなったらどうしたらいいのだろうか?
最近では盗難防止のために鍵穴がないドアノブも急増中だから、知らない場合慌てふためくことになり、注意が必要だ。
そこで、スマートキーが電池切れを起こしてドアが開閉できなかった時の対処法やスマートキーの今についてモータージャーナリストの岩尾信哉氏が解説します。
文/岩尾信哉
写真/岩尾信哉 ベストカー編集部 ベストカーWEB編集部
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進化し続ける自動車用キー
まずは現状でどのような車両用のキーが設定されているのか、整理してみよう。
差し込み式の鍵でドアのロックを施錠・解錠して、エンジンを始動・停止させるお馴じみのキーに始まり、次のステップとして、鍵を差してドアロックを解除する作業をキーに設定されたボタンによる遠隔操作で行う方式のものがある。
さらに進んで、キーのボタン操作によるドアロックの解除・施錠操作を必要としないキーレスキー(妙なネーミングだが)は、エンジンの始動・停止ではキーを鍵穴に差し込んで操作する。
次の段階では電子的になって、微弱な電波を利用して車両とデータを通信でやりとりする「スマートキー」は一般的になりつつある。
たとえばポケットなどに装置を入れたままでも、車両に近づくまたはドアノブに触れればドアロックを解除(車両から離れれば施錠)、車内に入ればボタン操作のみでエンジンの始動・停止できる(ハイブリッド車ではシステムの作動・停止)。
最近ではLSやRX、NX、UXなどの新しいレクサス車やマツダ3やCX₋30など、盗難防止やデザインを優先させるために外からドアノブが見えない車種も増えてきた。
しかし、スマートキーの弱点といえるのが、内蔵された電池の寿命だ。
キーレスキーの寿命は5~6年と思っている方が多いかもしれない。筆者も漠然と短くても2~3年は保つと捉えていた。
ところが、改めて各自動車メーカーの取扱説明書をいくつか確認してみると、スマートキーでは「1~2年」での交換を勧めているではないか。
むろんトラブル防止のための“安全マージンを含めての推奨期間だろうが、それでも注意しておくに越したことはないだろう。
ひとつ脱線しておくと、いわゆるスマートキーを利用した施錠解錠機能の「スマートエントリー」という呼び名はほぼ一般的と思っていたが、トヨタは「スマートエントリー&スタートシステム」、日産は「インテリジェントキーシステム」、ホンダは「Hondaスマートキー・スマートカードキーシステム」などといろいろあって煩雑になってしまっている。さすがに「スマートキー」という呼び名は定着しているようではある。
内蔵電池切れトラブルの未然防止法
ここからは、トヨタのクラウンの取扱説明書を見ながら、電子キーの電池の消耗についてチェックしていこう。
電子キーに内蔵されているのはCR型とよばれるコイン型リチウム電池。Cは電気的性質、Rは円形を意味しており、「CR2025」や「CR1632」など、続く4桁の数字は最初の2桁が直径(mm)、続く2桁が(高さ:厚さ)を意味する。
クラウンの取扱説明書にある「電池の消耗」についての記述を見ると、
「電池の標準的な寿命は1~2年です。(カードキーの電池は1年半程度で消耗します)」、「電子キーは常に電波を受信しているため、使用していないあいだでも電池が消耗します」とある。
使用している間に作動しにくくなったり、作動範囲が狭くなったりしたら要注意。さらにTVやパソコン、携帯電話など、「磁気を発生する電化製品の1m以内に保管しないでください」とされている。
電池切れになったら物理キーを活用する
それでは、うかつに電子キーが電池切れでドアロックが解除できなくなってしまったら、どう対応すればよいのか。
答えは、電子キーに備わる「物理キー」(メカニカルキー)を使ってロックを解錠すればよい。
「え? 普通のキーなんてついてないじゃないか?」と思った方は落ち着いて、電子キーを見てほしい。
よく確認すると、薄い筐体に見事に「物理キー」が収納されていることがわかるはず。
クラウンの場合はロック機構を解除して取り出せるのでよいが、コインや刃の小さいマイナスドライバーなどを使って取り出す必要がある場合があるのが難点だ。
なんとか物理キーを取り外すことができたら、ドアロックを解除して乗り込みたいところだが、電池の残量不足で物理キーを使った場合、車種によってはドアのロックを解除した際に、盗難防止装置が作動して10~30秒警報が鳴る場合もあるので注意が必要。慌てることなく対応してもらいたい。
運転席に座ったら、シフトポジションがP(パーキング)に位置にあり、ブレーキペダルを踏んでいることを確認する。
次にこれも意外に知っていないと実行できないかもしれないが、エンジンのスタート/ストップ・ボタンにスマートキーで触れる。こうして車両側にキーを認識させれば、ボタンを押すとエンジンがスタート(ハイブリッド車では運行可能)できる。
最近は盗難防止のために鍵穴がないドアノブも急増中!
ただし、最近では少々困ったことに、なんとか物理キーを取り出すことに成功しても肝心の「鍵穴」が一見しただけでは見つからないケースも出てきている。ドアに鍵穴がなかなか見当たらない場合も、あくまで落ち着いて探すしかないのだ。
レクサスや輸入車のように、車上荒らしの手段であるピッキング防止のために意図的に隠されており、また2019年に登場したマツダ3やCX₋30にはデザイン上の処理で鍵穴を見せない処理をしているので、少々苦労することになるかもしれない。
鍵穴部分がカバーされていたり、ドアノブの内側に設置されていたりと発見するのが難しい場合もある。しかし、それでも鍵穴が「必ずどこかにある」ことに間違いない。
たとえば、事故やトラブルに見舞われて乗員が車内に閉じ込められた場合、JAFや救急隊のスタッフが自力でドアを解錠しなければならず、緊急時ではドアロックの解除が物理的に迅速にできるか否かは、下手をすると命に関わることになるからだ。ともかく、慌てることなく、ドアノブの周囲などをよう探してみてほしい。
クルマを買ったら「トリセツ」で確認を!
と、ここまで書き連ねれば納得してもらえるように、スマートキーが電池切れではなく何らかの事情で壊れてしまった場合も、同様に物理キーに頼ることになるから、とにかく所有しているクルマの取扱説明書を一度でもよいから確認しておくことをお勧めする。
ドアを解錠できない、エンジンを始動させられないというもので、車内に入ることもできず途方に暮れてしまうこともあるだろう。
すぐに電池交換できれば万事解決だが、外出先ではこうはいかない。そんなとき、まずは落ち着いてスマートキーに内蔵されている物理キーを取り出して、鍵穴からドアを解錠しよう。
このとき注意しなくてはならないのは、盗難警報装置の作動だ。車種によっては、解錠してドアを開けた瞬間にホーンが10〜30秒ほど鳴り響くこともある。
しかし、これは正常な動作であり、その先の操作やエンジン始動によって止めることもできるので、急がず慌てず作業を進めよう。
電子キーの電池切れに見舞われた場合を考えると、ひとつだけ注文しておきたいのは、キーに内蔵されているコイン型リチウム電池の規格を、デザインや機能を含めた仕様の都合はあるにせよ、もう少し統一してもよいのではないかということ。
調べて見ると、どうやらキーのタイプによってどうやら多種多様の設定になっているようで、 販売店や電気屋さんやカメラ店などが周囲にあればよいが、コンビニエンスストアでも確実に手に入れられるように、できるだけ統一規格に近いように設定してもらいたい。
キーレスキー、スマートキー、カードキーと技術の進歩が進み、いずれはスマートフォンのアプリを利用するようになるような可能性は高いかもしれない(セキュリティの問題を確実にクリアするという課題が残っているが)。
利便性が向上するのはよいとしても、いざという時にある程度の予備知識は必要なことを肝に銘じておいて、面倒とは思っても「転ばぬ先の杖」として“トリセツ”をぜひともご一読のほどを!
賢いリレーアタック撃退法
最後にリレーアタックによるクルマの盗難の原因にもなっているのがスマートキーである。
リレーアタックはスマートキーの電波を利用して鍵を解錠させ盗難するという手口。スマートキーからは微弱な電波が出ているが、窃盗犯は中継器を使い電波を増幅させて、あたかもスマートキーで開錠したかのようにロック解除、エンジンをかけ盗難していく。
この「スマートキーの電波を利用する」というのがミソで、電波を遮断さえしてしまえばリレーアタックの被害は減る。
最近では電波を遮断するポーチなどが多数販売されているが、トヨタ車やレクサス車、マツダ車(マツダ3以降)にはスマートキーを節電モードといって電波を停止させる機能が備わっているので、リレーアタック撃退法として頭にいれておきたい。
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January 29, 2020 at 05:00PM
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