ここのところさまざまなメーカーから「60%キーボード」が発売されている。何が「60%」なのかといえば、フットプリント設置面積がフルサイズキーボードの60%程度というところから来ている。テンキーを省き、ファンクションキーや方向(矢印)キーなどを「Fnキー」とのコンビネーションとして削減することで、ボディーをコンパクト化していることが特徴だ。
持ち運びが簡単ということもあり、家とは違う場所に行ってゲームを遊ぶときにも重宝するため、ゲーマーを中心に人気を集めている。しかし、この60%キーボードは机上のスペースに困っているテレワーカー(在宅勤務者)の福音ともなりうる。筆者も机上スペース確保の観点から60%キーボードに興味を持ち、「Razer Huntsman Mini」「Corsair K65 RGB MINI」を試してきた。
しかし両者共に問題点がある。方向キーがないのだ。先述の通り多くの60%キーボードでは、方向キーはFnキーと組み合わせて使うことになる。これがかなりの慣れを必要とする。今年(2021年)の1月から2台の60%キーボードをレビューしてきたが、どうしても慣れない部分がある。
例えば、文章の作成中に特定の単語を複数回コピー&ペーストするシーンだ。Shiftキーを押しながら矢印でコピー範囲を選択してから、Ctrlキーを押しながらCキーを押してコピーをする。その後、カーソルを移動してCtrlキーを押しながらVキーを押してペーストする。この一連の操作を頭で“考えながら”やらないとできないのだ。
やっぱり方向キーが必要だなあ――そう思っていた所、Cooler Master(クーラーマスター)の60%キーボード「SK622」が目に入った。なぜか。そこに方向キーがあるからだ。これなら、方向キー問題は解決やん。税込みの実売価格は1万6000円前後である。
ただ、このSK622にはもう1つの「難関」がある。キーがUS(米国英語)配列なのだ。以前レビューした2モデルは日本語配列モデルが用意されているが、実際の60%キーボードは、多くがUS配列となっている。普段からUSキーボードを使っている人やヘビーゲーマーからすれば、さまつな違いかもしれない。しかし、長年日本語配列のキーボードを使っている筆者にとっては、「かぎかっこ」キーや「@(アットマーク)」キーの位置など、細かい違いが重大なのである。
でも「使うならUSキーボードですよ、やっぱり!」とか言うと“通っぽい”し、かっこいいやん、何となく。そんなしょうもない理由もあり、USキーボードへの習熟を兼ねて、SK622を試してみることにした。
しっかりとしたストロークを確保しつつも薄型化 ワイヤレス利用も可
SK622は、それまで使っていたRazer Huntsman Miniの代わりに使うことにした。
本体には、USB Type-A to Cケーブルとキーリムーバーが付属する。ケーブルが付属することからも分かる通り、ケーブルは着脱できる。このSK622は単なる「ケーブル着脱式」キーボードではないのだが、詳しくは後述する。
ボディーサイズは約293(幅)×103(奥行き)×30.28(高さ)mmだ。1段式のチルトスタンドも備えており、立てると高さは43.03mmになる。
筆者は普段アームレストを使っている。そのせいか、チルトを起こさないとやっぱり打ちづらい。だが、個人的にはこのスタンドは高めに感じる。チルトスタンドの中に小さいスタンドがあれば、もう一段下げて使いやすくできたと思った。
SK622は、Cooler Masterが“ロープロファイルスタイル”とが呼ぶ作りとなっており。基部からキーまでの高さがかなり低め(薄め)となっている。ただし、キーピッチは実測で約90mm程度、キーストロークは約2.5mm程度を確保している。薄型ではあるものの、打ちごたえはしっかりとしたものだ。
赤軸スイッチを採用していることもあり、キーのタッチ感はかなり軽い。素早く入力しても反応が早く、キー入力をしっかりと捉えてくれる。キーの形状は中央部に向かってくぼみが設けられており、指の腹と絶妙な形でフィットする。キーボードの縦方向が全体的にへこんでいることと相まって、打ちやすい。
この手のキーボードのスペースキーは、中央が盛り上がるように造形されているものが多いのに対し、SK622のスペースキーは他のキーと同様にややカーブがかかった造形となっている。こちらも、親指の腹にピッタリとフィットするのがよい。
デバイスとの接続は、USBケーブルに加えてBluetoothによるワイヤレスにも対応する。そのため、Windows PCやMacだけではなく、Android端末、iPhoneやiPadでも便利に使える。設定プロファイルは3つまで保持できるので、複数デバイスでの使い回しも問題ない。
バッテリーは充電式のものを内蔵しており、USBケーブルを介して充電できる。RGBライティングに対応しているせいか、容量は4000mAh(2000mAh×2)と大きめだ。
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機能のカスタマイズは「MasterPlus+」から
SK622の各種設定は、CoolerMasterのユーティリティーソフトウェア「MasterPlus+」を使って行う。MasterPlus+を起動し、左側のカラムから「SK622」を選ぶと、設定用のタブが表示される。
「ワイヤレス」タブはBluetooth接続で使う場合の設定を行える。スリープに入るタイミングと、LEDライトの明るさとLEDリングのオン/オフを調整できる。
ただし、Bluetooth接続時はMasterPlus+がSK622を検出できない。要するに設定時はUSB接続が必須ということだ。MasterPlus+に対応するデバイスが他にない場合は、「デバイスが見つかりません」とソフトウェアが強制終了してしまう。
これは不便なので、Bluetooth接続中もSK622の検出/設定に対応してほしい。
「照明」タブでは、その名の通りキーボードのライティングを設定できる。「静的」「虹の波」といった全体の動きを決定する項目の他、1つ1つのキーの光り方を自由に設定することも可能だ。
RGB設定の中では、筆者は「ウエーブ」が好きなので、他の機器でもよく設定する。MasterPlus+では、「左から右」「右から左」「上から下」「下から上」と4種類の設定ができるのはポイントが高い。「スペクトラムの円」という円を描いて色が回る設定でも、右回りと左回りを設定可能だ。
「マッピング」タブでは、任意のキーに機能を割り当てられる。変更したいキーをクリックするとメニューが表示されるので、割り当てたいキーを入力するか、メニューの中から選ぶと設定できる。
ただし、Fnキーの機能だけは、他のキーに割り当てられない。SK622ではファンクションキーはFnキーとのコンビネーションで実現している。左AltキーをFnキーに割り当てることができれば、右寄りのファンクションキーの操作がしやすくなるので、Fnキーの自由度はもう少し高めてほしかった。
「マクロ」タブでは、キーボードのマクロを設定できる。キーを順番に押して記録させれば、それを必要なシーンで呼び出せるという仕組みだ。ゲームの時など、よく使うコマンドをマクロとして登録すれば便利に使える。
「プロファイル」タブは、設定をプロファイルとして保存するために存在する。「インポート」すればファイルとして保存可能で、MasterPlus+をインストールしてある他のPCと設定を共有できる。
余談だが、プロファイルの拡張子は「json」となっている。これは「JavaScript Object Notation(JSON)」の略称で、JavaScriptオブジェクト記法を使ったデータ交換フォーマットファイルに使うものだ。実際、このファイルをダブルクリックすると「Visual Studio」が起動する。
MasterPlus+は、キーボードの設定において必要十分な機能は備えているのだが、Bluetooth接続時に設定できないことや、他のキーにFnキーの機能を割り当てられないことなど、細かい所まで目を向けると改善の余地は幾つもある。
もっというと、ソフトウェアのレスポンスも改善してほしい。起動時に「Cooler Master System」が選ばれている場合、SK622の設定をする際に「SK622」を選ぶことになるのだが、選んだ後にしばしソフトが固まることがあるのだ。恐らくだが、SK622を認識するのに時間がかかっているのだと思われる。ここも要改善だろう。
方向キーはとにかく便利
冒頭でも述べたが、SK622を使ってみようと思ったのは方向キーが独立して存在することがきっかけだ。
SK622の方向キーは、大きさも他のキーと同じで、操作しやすい。加えて、Deleteキーも独立して存在しているのだが、これは方向キーの右上にある。この配列は議論が分かれそうだが、場所が違うだけなので、コンビネーションキーの操作を覚えるよりは慣れやすいと思う。
USキーボード初心者としてまだ慣れていないのが横長のEnterキーである。日本語キーボードのEnterキーは縦長でキーつ分の高さがある。その感覚でタイプすると、Enterキーを押したつもりが「バックスラッシュ」キーを押してしまうのだ。
もう1つ、SK622で困ったのが漢字の入力である。一般的なUSキーボードでは、Altキーを押しながら「チルダ(~)」キーを押すとIMEのオン/オフを切り替えられる。しかし、SK622ではチルダキーが省略されており、Fnキーを押しながらEscキーを押すことで代用できる。つまり、IMEのオン/オフをする際にFnキーを押しながらAltキーとEscキーを押さないといけないのだ。これは率直にいって不便である。
筆者は普段、IMEとして「ATOK」を使っている。ATOKはキーのカスタマイズができるので「Ctrl+スペースキー」にIMEのオン/オフを割り当てることで問題を解決した。
しかし、連続で英文字を入れたい場合にも問題が生じる。日本語キーボードの場合「カタカナ/ひらがな」キーを押せば一時的に英文字を入れられるのだが、USキーボードにはこのキーはないので、同じことをする場合はATOKをいったんオフにしないといけない。もっとも、これはATOK固有の問題で、Windows 10標準の「MS-IME」であれば、Shiftキーを押しながらCaps Lockキーを押せば切り替えられる。
総合的に良い作りのキーボード
ここまでSK622を紹介してきたが、主にソフト面で細かい不満点はあるものの、キーボード自体は良い作りだ。キータッチも軽く、入力に負担がないので、いつまでも入力し続けられる。方向キーとDeleteキーが独立しているのもポイントが高い。
ゲームでの利用も同様で、「W」「A」「S」「D」キーを使ったキャラクター移動も手軽にできるし、短いストロークで反応するので、反射神経を求められるシーンでも活躍するだろう。
英語キーボードに抵抗感がないのであれば、話題の60%キーボードをSK622から始めてもよいのではないだろうか。
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